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【変形労働時間制】 |
変形労働時間制とは、閑散期における所定労働時間を短くする代わりに、繁忙期における所定労働 |
時間を長くするといったように、業務の特殊性や閑散繁忙期間に応じて、労働時間配分等を行うことに |
よって全体として労働時間短縮を促進するための制度です。 |
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変形労働時間制度の種類 |
1箇月単位の変形労働時間制 |
1年単位の変形労働時間制 |
1週間単位の非定形型的変形労働時間制(注1) |
フレックスタイム制 |
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(注1)常時使用する労働者数が30人未満の小売業・旅館・料理店・飲食店事業 |
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1箇月単位の変形労働時間制 |
1箇月単位の変形労働時間制は、1箇月の期間内(月始め、月末、特定の週等)において閑散の差 |
がある事業場に利用した場合に効果的な制度です。効果として特定された週において法定労働時間 |
(40時間特例44時間)を超えて又は特定された日(8時間)を超えて労働させる事ができるようになります。 |
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1箇月単位の変形労働時間採用手続き |
使用者は当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働者 |
の過半数で組織する労働組合がない場合は過半数の労働者を代表する者との書面による協定、また |
は就業規則、その他これに準ずるものにより定める事となります。 |
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常時10人以上の労働者を使用する事業場は、所定事項を就業規則または労使協定に定める事 |
が必要です。 |
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(注)労使協定による場合であっても常時10人以上の労働者を使用する事業場においては就業規則 |
に変形期間起算日、変形期間における各日、各週の労働時間、対象となる労働者の範囲を具体 |
的に定める事を要します。就業規則を制定・変更した場合には所轄労働基準監督署へ届出る |
必要が生じます。 |
(常時10人以上の労働者を使用する事業場は就業規則を作成・変更した場合は届出義務が生じます) |
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常時10人未満の事業場の場合は就業規則、その他これに準ずるものを作成して定めるか、または |
労使協定に定めることが必要となります。 |
労使協定による場合、労使協定を所轄の労働基準監督署へ届出る必要があります。 |
(常時10人未満の事業場は就業規則作成義務がないため(就業規則作成提出が望ましい)その他 |
これに準ずるものという表現をしています) |
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所定事項 |
変形期間および変形時間の起算日 |
変形期間における各日および各週の労働時間 |
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○1箇月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(特定対象事業44時間)を超えない |
ように計算する必要があります。 |
変形労働時間を実施するにあたって変形期間中の所定労働時間合計を次の計算式による時間内に |
おさめなければなりません。 |
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特定措置対象事業(44時間) |
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上記の計算式で求めた時間が、変形期間中の所定労働時間の上限となります。下記の「1箇月暦日 |
に対応する法定労働時間の総枠」以下でなければなりません。 |
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1箇月の暦日数 |
1箇月暦日数に対応する法定労働時間の総枠 |
31日ケース |
177.1時間 |
30日ケース |
171.4時間 |
29日ケース |
165.7時間 |
28日ケース |
160時間 |
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月初日を起算日とし、1日の所定労働時間を8時間とする場合には暦日31日、30日の月においては |
9日間の休日が必要となり暦日28日の月は8日間の休日が必要となります。 |
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フレックスタイム制 |
フレックスタイム制とは1日の所定労働時間の長さを固定的に定めずに、1箇月以内の一定期間に |
おける総労働時間を定めておき、労働者自身がその範囲で各労働日の労働時間を決定します。 |
労働者にとっては仕事と生活のバランスをとることができ、使用者側にとっても効率的な労働力を |
の提供を受ける事ができます。 |
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フレックスタイム制採用手続き(以下の要件が必要) |
○就業規則その他これに準ずるものに、始業及び終業の時刻の両方を労働者の決定にゆだねる |
事を規定する。 |
○労使協定に以下事項を定める。 |
・ 対象労働者の範囲 |
・ 清算期間及び清算期間の起算日(起算日を明確とした1箇月以内の期間) |
・ 清算期間中の総労働時間 |
・ 1日の標準労働時間(年次有給休暇を取得した際の賃金の算定基礎となる労働時間 |
を定めるため) |
・ 「コアタイム」、「フレキシブルタイム」を定める場合はその始業および終業を定める。 |
※「コアタイム」 →労働者が必ず労働しなければならない時間帯 |
※「フレキシブルタイム」→労働者の選択により労働する事ができる時間帯 |
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(注)フレックスタイム制を採用した場合であっても労基法の規定どおりに休憩をあたえなければなりません。 |
一斉休憩が必要な場合はコアタイム中に休憩時間を定める必要があります。 |
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フレックスタイム制の効果 |
労働者が選択した所により、1日において8時間を超えて労働する事ができ、1週間において週法定 |
労働時間40時間(特例44時間)を超えて労働させる事ができる。 |
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フレックスタイム制における割増賃金の支払い |
労働者の自己決定により、1日あるいは1週間の法定労働時間を超えて労働したとしても、清算期間を |
を平均して週の法定労働時間である40時間(特例44時間)を超えない限り、法定労働時間外とはならず |
割増賃金の支払いについては不要です。フレックスタイム制を採用している場合には、清算期間を通算 |
して法定労働時間を超えた時間が法定時間外労働となります。 |
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1年単位の変形労働時間制 |
1年単位の変形労働時間制とは、業務内容等によって繁閑の差がある事業場において労働時間の |
効率的な配分を行い、労働時間を短縮する事ができるように設けられた制度です。設定期間は1年以内 |
の一定期間で、平均して週40時間となる範囲で労働時間を設定します。 |
長期間にわたり長い労働時間を設定したり休日を与えないなどの問題が生じないよう、設定できる労働 |
時間や連続して労働させる事ができる日数に制限があります。 |
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1年単位の変形労働時間制採用要件 |
1年単位の変形労働時間制度は予め、1年間において繁忙期、閑散期が予測できる場合に1箇月を超え |
1年以内という対象期間の中で平均して週40時間労働制となるように下記の要件を満たす必要があります。 |
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○労働時間の長さ制限 |
1箇月を超え1年以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えないようにするため |
対象期間中の所定労働時間を次の計算式による範囲内におさめるよう設定します。 |
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(注)特例措置対象事業場であっても1年単位の変形労働時間制を採用する場合は原則どおり |
(週40時間)制となります。 |
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上記の計算式で求めた時間が、変形期間中の所定労働時間の上限となります。 |
下記の「対象期間中の法定労働時間の総枠」以下でなければなりません。 |
対象期間 |
対象期間中の法定労働時間の総枠 |
1年(365日)ケース |
2,085.7時間 |
6箇月(183日)ケース |
1,045.7時間 |
4箇月(122日)ケース |
697.1時間 |
3箇月(92日)ケース |
525.7時間 |
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1日および1週の労働時間の限度 |
1日10時間および1週52時間という限度が設けられています。そして対象期間が3箇月を超える |
場合、この限度まで利用できる範囲には制限があります。 |
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(1)対象期間中に、週48時間を超える所定労働時間を設定した週が連続で3週間以内であること |
(2)対象期間を初日から3箇月ごとに区切った各期間において、週48時間を超える所定労働時間 |
を設定した週の初日が3日以下(3以下)であること |
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連続して労働させる事ができる日数 |
対象期間中に連続して労働させることができる日数の限度については、6日を超えないように、少な |
くとも6日ごとに1日の休日を設定しなければなりません。ただし、あらかじめ労使協定で対象期間中 |
の特に業務が繁忙な期間を「特定期間」として定めた場合に限り、特定期間については週に1日の |
休日を確保できる範囲で所定労働日数の設定が許されます。(休日と休日の間が中12日間) |
日 |
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
土 |
日 |
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
土 |
◎ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
◎ |
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◎休日 ○出勤日 |
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1年単位の変形労働時間制採用手続き |
1年単位の変形労働時間制を採用するにあたっては上記の採用要件を満たすとともに以下の項目 |
を労使協定にて定め、所轄の労働基準監督署に届出る必要があります。 |
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○労使協定に以下の項目を定める。 |
・ 対象労働者の範囲 |
(労働基準法により適用除外されている者を除いて制限はなく、中途退職予定者、中途採用者 |
等を対象期間の一部のみ勤務する労働者も対象とできますが、この場合は勤務した期間を |
平均し1週間当たり40時間を超えた時間について割増賃金を支払う義務があります) |
・対象期間の起算日 |
・対象期間 |
(1箇月を超え1年以内であることが必要です。特に業務の繁忙な期間を「特定期間」をして |
定める事ができます) |
・対象期間における労働日および各労働日ごとの労働時間 |
(対象期間を平均して1週間の労働時間が40時間以下となるように労働時間限度に注意する |
必要があります) |
・有効期間 |
(1年以内とする事が望ましいとされています) |
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※対象期間を1箇月以上の期間に区分する場合は最初の1箇月(最初の期間)については労使協定 |
により各労働日ごとの所定労働時間を特定しなければなりませんが、その他の期間については、 |
労働日数と総労働時間を定めればよいとされています。ただし、各区分ごとの具体的な労働日と |
労働時間は各期間の初日の少なくとも30日前までに、その事業場の過半数で組織する労働組合、 |
ない場合は労働者の過半数を代表する者の同意を得て書面で定める事が必要です。 |
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就業規則の定めおよび提出 |
1年単位の変形労働時間制について、始業、終業時刻や休憩時間、休日等就業規則における絶対的 |
必要記載事項について、就業規則上に定めをするか、就業規則上に労使協定の記述に委任する旨を |
明示したうえで労使協定(年間会社カレンダー含む)を添付しておく必要があります。 |
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1年単位の変形労働時間制効果 |
特定された日において8時間を超えて、又は特定された週において40時間を超えて労働させる事が |
できる。1年単位の変形労働時間制を導入した場合における、時間外労働となる場合は1箇月単位の |
変形労働時間制と同様の扱いとなる。 |
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1週間単位の非定型的変形労働時間制 |
日々の業務において繁閑の差が大きく、1箇月単位の変形労働時間制等では対応できない場合に |
おいて比較的忙しくない日において労働時間を短縮し、忙しい日に労働時間を延ばす制度です。 |
ただし、この制度を導入するには事業要件およびその事業規模を満たす必要があります。 |
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1週間単位の非定型的変形労働時間制採用要件(以下の要件全てを満たす必要あり) |
○小売業、旅館、料理店、飲食店の事業 |
○常時使用する労働者数が30人未満の事業 |
○日ごとの業務において著しい繁閑の差を生じる事業 |
○繁閑期間を予測した上で就業規則その他これに準ずるものにより各日の労働時間を特定 |
することが困難であると認められる事業 |
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1週間単位の非定型的変形労働時間採用手続き |
労使協定により締結すること(所轄労働基準監督署へ届出必要) |
少なくとも該当1週間の開始前に労働者に書面にて通知すること |
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1週間単位の非定型的変形労働時間制効果 |
1日について10時間まで労働させる事ができる。 |
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